ゼロミッション
先日、車の点検でディーラーに行きました。作業待ちの時間暇だったのでディーラーに置いてあったゴルゴ13を読みましたがゼロエミッションという話に感銘を受けましたので紹介させていただきます。
この話は、ゼロエミッションである水素エンジンを企画しながら、電気自動車を推す技術担当役員に会社(サワダ自動車、社長が一代で築き上げた自動車メーカーという設定なので個人的にはホンダをイメージしました。)を追い出されたエンジニアが安全な水素エンジンを完成させてフランスの自動車メーカー(エミュー、ルノーか?)にその技術を販売しようとするところから始まります。
技術担当役員の推すインホイールモーターの電気自動車をサーキットで自ら運転したサワダ社長は、過去の技術ではあるものの走行性能や生産の効率性は認めましたが、充電時間・航続可能距離・価格の点から市場価値がないという評価を下します。電気自動車に見切りをつけたサワダ社長は自社を退社したエンジニアに水素エンジン技術を譲渡してくれるように頼みますが、逆にエミューに譲渡することになっていることを知らされます。このままでは、自社だけでなく日本の自動車産業が壊滅することを危惧したサワダ社長は、渡米してゴルゴ13に水素自動車のテスト走行時に銃撃・爆破させることを依頼しますが断られます。
サワダ社長は、その足で旧知のワールドモータース(GMか?)の社長を訪れます。サワダ社長は、ワールドモータースはかつて鉄道網の発達していたロサンゼルスの鉄道会社を買収し鉄道網を縮小し代わりに高速道路網を整備して人々が車に乗らざるを得ない状況を作り上げたことを指摘して、今回も何とか水素自動車を失敗させるようにワールドモータースの社長に協力を依頼しますが、これも断られます。
そしてフランスでエンジニア運転による水素自動車のテスト走行が始まりますが最高速に達したところでゴルゴ13の銃撃により水素自動車は爆発し、水素エンジン技術は危険な技術として葬られることになります。
その後、ワールドモータースの社長は、ロサンゼルスの鉄道網を壊滅させたのは、実は石油会社であったこととゼロエミッションエンジンはすでに自社でも開発していたが石油が枯渇するまで販売は許されないことを話してこの話は終わります。
最近は、電気自動車が注目されていますが、推進派は、ヨーロッパと中国でアメリカはテスラやカリフォルニア州が推進しているもののそれほど乗り気ではないように思います。背景に石油会社がからんでいるのではという話は、ひょっとしたらと考えさせられました。またトランプ政権のパリ協定離脱やそもそもトランプ大統領の誕生自体にも関係あるのかもしれないという想像が広がります。ただし、この話を読んで一番驚いたことは別にあります。
この話の最後は、中国に自動車が普及した場合には、二酸化炭素の排出量が現状の2.5倍になると書いてありました。すでに中国には自動車が普及しているのにと思ってこの話の発表年を見ると1997年となっていました。作者である、さいとう・たかを氏が20年以上前にこの話を作っていたことにはたいへん敬服した次第です。