軽減税率と地方創生
衆議院選挙は与党の圧勝で終わりました。
ところで、自民党と公明党は、温度差はあるものの消費税率引き上げ時に軽減税率の適用を目指しているようです。実務の複雑化に配慮して軽減税率に反対する声もあったと思いますが、いよいよその適用が現実味を帯びてきました。確かに、何が贅沢品で何が生活必需品なのかの判断は、難しいでしょう。消費税とは関係ありませんが、ゴルフはスポーツだからゴルフ場利用税を廃止しましょうという意見に対して猛反対があったことも記憶に新しいところです。個人的には、ぜひ、廃止して欲しいと思うのですが。
ところで、わが国の消費税の仕組みは、多段階課税方式と呼ばれるもので、簡単に言えば流通過程のすべての事業者が、売上先から受け取った消費税から仕入先に支払った消費税を差し引いてその差額を国に納付するという方式です。
その結果、理論的には、最終消費者に販売した価格に税率を乗じた金額と同額が国に納付されることになります。
それなら、こんな複雑な仕組みにしなくても消費者に販売する事業者だけが、消費者から消費税を受取り、それを国に納付すれば良いのではないかと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回も昔話になって恐縮ですが、私は消費税導入当時、部品メーカーの経理部門に勤務しておりました。消費者に物を売っているわけではないので消費税は関係ないと思っていたのですが、多段階課税方式により消費税対応を行うはめになり、対応するシステムもなく四苦八苦したことを思い出します。
消費税が多段階課税となった理由は、わかりませんが当時は、まことしやかに税務当局が事業者の取引を把握するためだと言われたものでした。ただし、EUのようなインボイス方式ではなく帳簿方式が導入されたため、その目的も達成できたのかは疑問ですが。
ところで、多段階課税ではなく消費者に販売した事業者だけが納付する方式を取っている消費税としては米国のセールスタックスがあります。米国のセールスタックスは日本と違い地方税ですので州によって税率が異なります。また、米国も財政赤字のようですが、セールスタックスが地方税ということは、消費税で国の財政再建を目指すというような発想はないのでしょう。
ところで、最初に申し上げた物品別の軽減税率適用については、一般消費税を推進した税務当局にとっては面白くないかもしれません。まして、真偽のほどは定かではありませんが、欧州の消費税であるVATの軽減税率は、消費税導入時に廃止されたわが国の物品税に範を取ったともいわれています。そうなると軽減税率適用というのは、たくさんの人々の顔をつぶすことになるのではないかと思うのですが、ここは地方創生を大義名分にして、国税のままで、米国のように単段階課税方式と地域別税率を適用するというのはどうでしょうか。
都会の消費税率を引き上げて、地方の消費税をなくしてしまえば、ふるさと納税の何倍ものスピードで地方創生が進むと思います。
富裕層が税率の低さだけで都会を離れるとも思えませんが、仮に地方移住すれば大歓迎されるでしょうから出国税のような税金も不要でしょう。そして外国人の化粧品免税にお怒りの女性の皆さんも消費税のない地方で買い物をすれば不満も解消することでしょう。